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2015
04.22

心理療法としてのマインドフルネス

 

日本では仏教的な瞑想が古くから心理臨床の場で用いられてきました。内観法・静座療法・息心調和法や森田療法など、日本発祥の心理療法と考えられています。また、伝統的な仏教瞑想も、ストレス低減・情動調整・不安緩和・集中力向上などに効果があるとされてきました。

 

現在おこなわれているマインドフルネス瞑想は、心理療法では第三世代の認知行動療法として位置付けられています。認知行動療法とは、「症状や問題行動を改善し、セルフケアを促進するために、非適応的な行動パターンや思考パターンを系統的に変容していく行動科学的治療法」と定義づけています。

 

第三世代の認知行動療法は、1950年代から体系化されてきた学習理論に基づく行動療法と、1970年代に起こってきた情報処理理論に基づく認知療法という二つの流れを汲んで発展してきました。

行動療法は、行動主義心理学の流れの中で、パブロフやスキナーらの研究やバンデューラーの認知心理学から発展してきたものです。

一方、認知療法は、A・エリスの論理情動療法やAT・ベックがうつ病の治療法として開発した認知再構成法の流れの中で発展したもので、臨床の中で生み出されてきた認知モデルを用いた心理療法です。認知モデルとは、人の感情や行動が、出来事に対する理解の仕方に影響を受けるという仮説です。

1990年代から認知療法と行動療法が互いに補い合い、影響し合って統合されてきたものが認知行動療法と呼ばれています。

さらに、2000年代に入り従来の行動療法や認知療法をベースにして、新たな概念やモデルを加えたいくつかの治療法が展開されています。

これらが新世代あるいは第三世代の認知行動療法と呼ばれる一群の治療法です。この中には、マインドフルネス認知行動療法・アクセプタンス&コミットメントセラピー・弁証法的行動療法・メタ認知療法・神経行動療法・行動活性化療法などが含まれています。

 

マインドフルネス瞑想は、主にマインドフルネス認知行動療法の中で実践されますが、マインドフルネスの技法は第三世代の他の治療法の中にも取り入れられています。

新世代の認知行動療法の大きな特徴は、認知の内容よりも機能やプロセスが重視されるようになったという事であるといわれています。

これには、学習理論において行動を人と環境との相互作用で捉える際に、認知や思考も行動の一部とみなして取り扱うようになった事が大きく影響しています。また、情報処理理論においては、注意やメタ認知の基礎的研究に基づいて、認知の内容よりもその過程が注目されるようになった事も大きな要因と考えられています。これらの要因が影響し合って新しい治療法が構築されてきたと考えられています。

 

では、マインドフルネスは認知行動療法の中でどのように生かされているのでしょう。

認知行動療法はセルフヘルプの精神療法と考えられています。治療の中でクライアントはセラピストの支援を受けてセルフモニタリングをおこなっていきます。その際、何らかの症状や問題が生じた時にどんな刺激があったか、自分が何を考えたか、どんな感情が起こったか、どのような身体反応が現れたか、どう行動したか、その結果がどうなったか、などを詳細に振り返っていく事になります。そして、振り返りの過程の中で不適応をおこしている行動や思考のパターンに気づき、それを修正していく事が求められるのです。

しかし、これまでの認知行動療法の臨床データとうつ病再発研究の結果から、認知の偏りが修正されずに残っている事が、必ずしもうつ病再発の原因とはいえない事が示されました。再発に大きく関与しているのは、認知の内容や頻度ではなく、認知過程の反応の仕方すなわち気分や自動思考に囚われて反芻してしまうような傾向性である事がわかってきたのです。

うつ病が落ち込んだ気分・反芻思考パターン・体験回避・身体感覚(痛みや疲労など)等の相互作用として現れる時、そこに反応の連合が形成されて学習されます。すると、仔細な気分の変化によってもこの連合が活性化されるような状態が作られると考えられます。

第三世代の認知行動療法では、認知や気分との関係性を変えることでその影響力を変化させる事が目標となってきます。そのためには、認知や気分と距離を置く事、客観的に自分を捉えるメタ認知的な視点が重要となります。その時、不快な思考・感情・感覚を排除したりコントロールしようとすると、それらと距離を置くことができずに逆に維持させてしまうと考えられているのです。そこで、出来事を評価判断せずに受け入れる事が必要となり、そのまま受容しながら本来の目的や価値観に沿った行動を起こしていく事を目指していきます。この過程の中で、マインドフルネスの実践が有効な技法として応用されているのです。

 

マインドフルネスは今の瞬間の体験に常に注意を向けて気づき、その現実をあるがままとして評価せずに受け入れて、それに対する思考や感情に囚われないでいる心の持ち方です。

 

その背景には、仏教的な物事の捉え方や心の持ち方が組み込まれています。

仏教では、人は六根を通して外界を感受し、それに執着する事で苦が生まれるとされています。六根は眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根であり、五感に加えてもう一つは意識として感受されるものを指しています。この意根は、認知行動療法の視点からは自動思考と捉える事もできるでしょう。つまり、瞬間瞬間に脳裏に浮かぶ思考も感覚と同等のものとして観るのです。今の瞬間の体験の中には、自分の思考・感情・身体感覚・記憶などが含まれますが、それらは即座に解釈・評価・イメージ・気分などに覆われてしまいます。あるがままには知覚できずに認知の偏りが加わって意識されるため、それが現実や自分そのものであると取り違えてしまいます。マインドフルネスでは、六根を観察しながらそのままとし、そこから派生してくる感情・気分・想起などもあるがままに受け入れ、それらが空想や妄想であることに気づいていきます。その時、既に派生してしまったものを排除しようともがく事は、それらを自分の意識の中心に置いて囚われ悩み続ける事になるという事にも気づいていくのです。つまり、派生したものを受容して次の空想や妄想を起こさず、さらに衝動的な反応や行動につなげない事を目標としているのです。

 

マインドフルネスに基づいた心の使い方を実現するための方法論が、瞑想実践の中に示されています。例えば、MBSRのプログラムにおけるマインドフルネス瞑想では、まず呼吸に注意を向けていくよう指導されます。この時鼻を通過する息の感覚や腹部が膨らんだ縮んだりする感覚として意識します。呼吸はコントロールしようとせず、そのままの感覚を観察していきます。これは、現実の体験を力まずに受け入れていく態度を作る基盤となるものです。そして、何かの刺激や考えが浮かんで注意がそれた時は、それが何であるかを観察してそのままとし、また呼吸の感覚に戻るという事を繰り返すのです。これは、「今ここ」の体験と呼吸という一つの対象に注意を向け続ける事で注意の集中と持続の練習ともなっています。また、自動思考や反芻思考を意識の中心におかず、他の対象へと注意を転換する練習でもあり、脱中心化につながるものでもあります。

不安やうつ症状を持続させる病理的な要素として脅威刺激への注意の偏りや自己注目がありますが、それらの問題にも対応する練習となっているのです。この注意の集中・持続・転換が安定して維持できるようになったら、次に注意の範囲を広げて六根で感受する全てのものを同等に観察してそのままとします。これは注意の分割の練習ともいえるものであり、マインドフルネス瞑想の中核となる技法です。この時、それらの体験の中には当然不快なものや回避したいものも含まれているでしょう。しかし、そこでの感情や衝動も観察してそのままとし、また「今ここ」の現実を象徴するものでもある呼吸の感覚へと注意を戻すのです。このようにして、体験と共にいて回避せずに留まり、受容する事への意欲・優しさ・興味などを含む態度を構築していく事になります。

これは、脱中心化された視点から今の体験と自分の自動思考や反芻思考のパターンに関わり、それらを見直す土台となります。この瞑想実践は、まずは静かな環境の中で1530分程度の時間を取っておこなっていくよう指示されます。その中で身体感覚・思考・感情などの様々な私的出来事に気づき、そのままにすることでそれ以上には発展せず、消えていくものであることを繰り返し確認していきます。そして、並行して3分程度の短い時間の中でもこの瞑想がおこなえるように練習し、日常生活の中の様々な機会を捉えて実践を試みていくのです。私達が問題やストレスと直面するのは、日常の場面です。そのあらゆる場面で、マインドフルネスの心の持ち方が応用できる事を目指していくことになります。これらの瞑想実践を継続する事で、全ての体験は常に変化していくものであり、自ら注目し続けない事により思考・感情・衝動は増殖せずに消えていくものである事が実感されていきます。そして、困難で不快な思考や感情も心の中で過ぎ去っていく出来事であり、必ずしも現実を反映してはおらず、自我の中心的な部分ではないという事にも気づいていくのです。このようにして、非適応的な思考パターンや行動パターン自体も次第に変容していくことになります。

 

このように、マインドフルネスを取り入れた認知行動療法では、認知の内容や偏りを修正する事ではなく、認知の内容との関わり方いわば認知の機能を変えていく事に重点が置かれています。マインドフルネスの実践を通して私達は、自分の脳裏にこれまで何度も繰り返されてきた思考・感情・記憶が相変わらず現れたとしても、それらが学習されて習慣化したパターンである事に気づく事ができるのです。そして、それを現実や自分と混同することなく、またその内容を変えようと衝動的な対処もせずに、距離を取ってそのまま観察して消えていくのを見守る態度が培われます。さらにその態度を日常生活に広げる事で、何が心に浮かんだとしても生活が邪魔される事はなく、現実に行動していく事ができるようになるでしょう。そのような心の持ち方を獲得していくのがマインドフルネス瞑想の目標となると考えられます。













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