2015
01.25

マインドフルネスと心理療法

仏教瞑想やマインドフルネスを医療や心理療法に応用しようとする試みはアメリカから始まりました。アメリカでは、196070年代にヒッピームーブメントや人間性回復運動等を背景として禅ブームが起りました。その後、チベット仏教や上座部仏教への関心が高まる中でマインドフルネス瞑想も広まっていったようです。マインドフルネスを心理療法の技法として最初に開発したのは、J・カバットジン(Jon Kabat-Zinn.1944~)です。彼は、マサチューセッツ大学でマインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-based Stress Reduction Program = MBSR)を1979年から実施しました。カバットジンの技法は、上座部仏教や禅、ヨガなどいくつかの体験を基盤として考えられたものですが、実践形式はヴィパッサナー瞑想に近いといわれています。MBSRでは、マインドフルネスとは「物事をあるがままに受け入れ、現在の瞬間に、価値判断をせずに注意を向ける事によって現れる意識=気づきのこと」7とされています。MBSRは、8週間のプログラムになっており、呼吸法、正座瞑想、ボディスキャン、ヨガ、歩行瞑想等を組み合わせて、講義とエクササイズ、ホームワークをおこなうことにより、ストレスとの関わり方を学び、実践していくのです。プログラムの開始時と終了時には、参加者の身体的、精神的な症状をチェックし、終了後も何回かの追加調査を行って効果を判定し、エビデンスを得ています。

その後もアメリカでは、マインドフルネスを心理療法に応用していく動きが継続していきます。そのような展開の中で1993年、ZV・シーガル、JMG・ウイリアムズ、JD・ティーズデールらは、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy = CBT)にMBSRの技法を取り入れて、マインドフルネス認知療法(Mindfulness-based Cognitive Therapy = MBCT )を開発しました。CBTは、うつ病治療のアプローチとして、1960年から70年代にかけてAT・ベックが開発し、有効な治療法として現在も広く実施されているものです。ベックは、患者のネガティブな自動思考がうつの原因と捉え、その根底にある思い込み(信念=スキーマ)から生じる認知の歪みや偏りを修正することにより思考のあり方が変容し、うつが改善すると考えました。それに対して、シーガルらは、うつ病の再発予防に取り組む活動の中で、認知療法が治療として効果を発揮するのは、患者が自身の自動思考をチェックしていく過程で、ネガティブな思考や感情と距離を取れるようになるためである事を明らかにしました。思考から距離を取る事は脱中心化と呼ばれ、自己の認知を客観的に認識するメタ認知に通ずるものであり、それを促進する方法としてマインドフルネスに注目し、MBSRに取り込んだのです

さらに、その後もマインドフルネスの技法は、第三世代、または新世代の認知行動療法といわれる心理療法に取り入れられていきました。一つは、マーシャ・リネハンが開発した弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy=DBT)ですが、これは境界性パーソナリティ障害の治療に特化したもので、アメリカでは広く推奨され、エビデンスの確認されている心理療法です。また、スティーブン・C・ヘイズが開発したアクセプタンス&コミットメント・セラピー(=ACT)もその一つです。ACTにおけるアクセプタンスは思考や感情を観察し受容する事を意味しており、コミットメントは自分の価値を再確認し、逃避や回避をせずに積極的に行動していく事を意味しています。いずれの心理療法においても、マインドフルネスは中核技法として位置づけられています。


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